採血室
当院の外来採血室では、国家資格を有する臨床検査技師が採血をおこなっています。
採血は手技により検査結果に影響を与える項目もあります。血液検査をおこなう臨床検査技師が採血をすることで、より確実に正確な検査結果を提供することが可能となります。また、採血室と臨床検査室が直結しているため、採血後は速やかに検査を開始することができます。
採血室では安全に採血を受けていただくために、患者介助や採血技術の向上を目的とした研修を定期的におこなっています。また、採血によるトラブルなどの対応や情報共有を目的とした会議をおこない、安心して採血を受けていただけるよう努めています。
検体検査室
生化学・免疫検査
生化学検査とは、患者さんから採取された血液、尿、体液などを用いて糖、脂質、たんぱく質などの成分を自動分析装置を用いて定量的に分析し、どこの部分に疾患があるのか、どれくらい進行しているのか、どれくらい治療効果があるのかなどを調べる検査です。
免疫検査とは、もともと体内には存在しない異物(細菌など)が侵襲すると体を守るために抗体という物質を作る働き(抗原抗体反応)を基本原理とした免疫学的分析法を用いて免疫学的成分(腫瘍マーカー、ホルモン、感染症関連抗原・抗体など)を分析する検査です。これらの検査は患者さんの感染症の診断や治療効果の判定、腫瘍の大きさ・転移・再発の有無などの変化を推測するために行っています。
1日1000件以上の検体を検体到着から約30分以内に結果報告し、診察前に検査結果が分かるように努めています。また、当院検査室ではそれぞれの患者さんの今日の検査結果全体を見て、時には分野を超えて確認を取るなど連携をとり、病態を推測しながら報告しています。目指すのはタイムリーな検査結果の提供です。
主な測定項目
- 酵素活性検査 (AST、ALT、AMY、γ-GT、ALP等)
- 電解質検査 (Na、K、Cl等)
- 蛋白検査 (TP、ALB等)
- 生体色素検査 (TB、DB等)
- 糖代謝検査 (GLU、HbA1c、GA等)
- 脂質検査 (TC、TG、HDL-C等)
- 含窒素成分 (UN、CRE、UA、NH3等)
- 各種ホルモン検査(FT3、FT4、TSH等)
- 心不全の病態把握検査 (BNP、NT-proBNP)
- 感染症 (HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体、HCV抗体等)
- 腫瘍マーカー (CEA、CA19-9等)
血液・凝固検査
血液検査とは、血液中の細胞成分である赤血球、白血球および血小板の数や大きさを測ったり、ヘモグロビン濃度などを測定し、貧血や血液疾患の有無を調べます。凝固検査とは、出血があったときに止血する機能がきちんと働くかどうかを調べる検査です。
外来採血室と隣接しているため、検査結果に影響する検体(検体凝固など)に対して迅速に対応し、検査結果を早く報告するよう努めています。
主な測定項目
- 血球算定(ヘモグロビン、白血球分画等)
- 凝固検査
- 赤血球沈降速度(血沈)検査
- 骨髄検査
- フローサイトメトリー検査
日常検査の流れ
- 赤血球
肺で酸素を受け取り、全身の組織へ運搬・供給し、二酸化炭素を回収します。 - 血小板
血小板は血液を固める役割があり、止血および血液凝固に重要な働きをします。 - 白血球
異物の貪食、殺菌、消化、免疫応答などの作用があり、感染から身体を守る働きをしています。
白血球は好中球、好酸球、好塩基球、単球およびリンパ球の5つに分画され、末梢血や組織でそれぞれの役割があります。
これらの数値や割合に異常が認められた場合は血液の標本を作製し、染色して顕微鏡で観察をおこないます。
凝固検査
凝固検査とは、出血のしやすさ、血栓のできやすさを調べる検査です。
出血傾向のスクリーニング、出産や手術前の止血能の検査、抗血栓療法(ワーファリン、ヘパリンなど)のモニタリングなどがあります。また、止血のときに働く凝固因子は主に肝臓で作られるため、肝疾患の進行程度の診断にも用いられます。凝固因子は12種類あり、Ⅰ~ⅩⅢまでの名前がつけられています。(第Ⅳ因子はカルシウムイオン、第Ⅵ因子は欠番)
赤血球沈降速度(血沈)
赤血球の沈降する速度を見て炎症の有無や程度を調べる検査です。血沈はいろいろな疾患で異常値を示すため、他の検査との総合的な結果をふまえて判断されることが多いです。
骨髄検査
腸骨(腰の骨)に針を刺して、骨の中にある骨髄液を採取する検査です。骨髄液をスライドガラスに薄く広げて染色したあと顕微鏡で観察し、血液疾患や腫瘍細胞の有無、血液を造る機能などを調べます。血液・リンパのがんの診断や治療法の選択、治療効果の判定などに重要な検査です。
フローサイトメトリー検査
細胞などを予め蛍光物質で染めておき、そこにレーザー光を当て、そこから出る光の強さをデータ化し、解析を行う検査です。主にリンパ球などの白血球の分類に使用しています。
輸血検査
手術やケガ・病気などで大量の出血が起こったときや血液疾患による血液成分の欠乏・機能不全の場合に輸血を行います。輸血検査とは、輸血事故や輸血副作用を防止し、安全な輸血を行うための重要な検査です。輸血実施後は、輸血による副作用発生の有無の管理、感染症に罹患していないかの検査も行っています。
当院は、一般社団法人日本輸血・細胞治療学会より輸血機能評価認定制度(I&A)認証病院として認定を受けています。I&Aとは、各施設が適切な輸血管理が行われているかを第三者によって点検し、認証することで、輸血療法の安全性を保障するものです。
また、臨床輸血に精通し安全な輸血に寄与することのできる医師・看護師・臨床検査技師の育成を目的とした学会認定研修施設に指定されています。
主な測定項目
- 血液型検査(ABO式・Rh式)
- 不規則抗体検査
- 直接抗グロブリン試験
- 交差適合試験
日常検査の流れ
主に全自動輸血検査装置を用いてABO式・RH式血液型検査、不規則抗体検査、交差適合試験などを検査しています。機器で測定できない微量検体や特殊な検査は用手法で検査を行っています。また、輸血用血液製剤の発注、保管、入庫・出庫管理を行い、医師からの輸血の依頼に迅速に対応できるよう努めています。
一般検査
一般検査とは、尿・便・体液(髄液・胸水・腹水・関節液)に含まれる成分の検査を行います。特に尿検体は痛みを伴わずに採取できます。尿中の蛋白や糖などを調べる尿定性検査と、尿中の細胞成分や細菌などを調べる尿沈渣検査があり、腎機能・泌尿器などの疾患の病態把握に有用な検査です。
採尿トイレの検体提出場に小窓があり、検査スタッフと直接、採尿時の心配事などの相談ができます。採尿量や採尿のタイミングなど気軽にお声かけ下さい。
主な測定項目
- 尿検査(尿定性検査・尿沈渣検査)
- 体液検査(髄液・胸水・腹水・関節液)
- 便検査(便潜血・寄生虫)
- 感染症迅速検査(インフルエンザ・RS・ノロなど)
日常検査の流れ
尿定性
尿試験紙と呼ばれる「ろ紙」に試薬を染み込ませたものを尿に浸し、色の濃度で(+) や(-)を判定する検査です。当院では尿試験紙を用い機械で検査を行っています。
検査項目
- ウロビリノーゲン
- 潜血
- 蛋白質
- ブドウ糖
- ケトン体
- ビリルビン
- 亜硝酸塩
- 白血球
- 比重
- 色調
- 濁度
- pH
尿沈渣
提出された尿の中に入っている「赤血球」「白血球」「細菌」「上皮細胞(腎臓、尿細管、膀胱から脱落したもの)」などを機械および顕微鏡で確認し、腎臓や膀胱などの障害を調べる検査です。また異常細胞を見付け悪性腫瘍の早期発見に努めています。
便潜血
消化管疾患における出血や消化吸収障害の早期発見を目的とした検査です。排泄時に便が大腸癌やポリープなどに接触し、血液が付着することがあります。その付着した目には見えない微量な血液を調べることで病気の発見に繋げています。通常は検出率を上げるために2日間に分けて検査を行います。
検査結果に影響を与える原因
ビタミンC(アスコルビン酸)が含まれている製品の摂取を避けましょう。ビタミンCはアスコルビン酸とも呼ばれ、様々なものに含まれています。食品だけでなく、清涼飲料水やお茶などのペットボトル飲料に保存料として含まれていることがあります。また、サプリメントや健康食品に含まれていることもあります。尿定性検査では、尿がどのような状態であるのかを検査します。ビタミンCはいくつかの項目に影響を与えて、本当は陽性のところ陰性となってしまうことがあります。正しい検査結果を得るためにも、尿検査の前にはビタミンCを含む食品や飲み物の摂取は避けるようにしましょう。
細菌検査
細菌検査とは、感染症の診断おいて必要不可欠な検査であり、患者さんから採取された様々な検体(尿、便、喀痰など)の中に感染症を引き起こす原因菌がいるかどうかを調べる検査です。また、感染症の治療にあたって、その菌にどんな薬が効くかを検査します。感染制御チームや抗菌薬適正使用支援チームの一員として活動しており、検査結果をできるだけ早く正確に報告し、多職種と連携を図りながら薬剤耐性菌などの情報提供に努めています。
主な測定項目
- 顕微鏡検査
- 培養検査
- 同定検査
- 薬剤感受性検査
- 抗酸菌検査(顕微鏡検査、遺伝子検査)
日常検査のながれ
1日目:顕微鏡検査、培養検査
検体中の菌を染色し、顕微鏡で観察します。検体を寒天培地に塗って、菌を目に見える形(コロニー)にします。
2日目:同定検査
寒天培地に形成されたコロニーを用いて様々な性状を確認し、どのような細菌かを決定(同定)します。
3日目:薬剤感受性検査
菌名が決定すると、その菌に対してどの抗菌薬が効くのかを調べます。同じ菌名でも同じ抗菌薬が効くとは限らないため、適切な抗菌薬の選択を可能にするために重要な検査です。
遺伝子検査
遺伝子検査は、ヒトに感染症を引き起こす細菌やウイルスなどの遺伝子を検査する「病原体遺伝子検査」、ヒトが生まれ持っている遺伝子を検査する「生殖細胞系列遺伝子検査」、がん細胞や白血病などの病気の原因となる遺伝子変異を検査する「ヒト体細胞遺伝子検査」、に分けられます。遺伝子を増幅するPCR装置を用いて、これらの遺伝子検査を行っています。
遺伝子分析科学認定士の取得者が在籍し、遺伝子検査の管理を行っているほか、迅速に正確なデータの提供ができるよう、スキルアップに努めています。また、検査体制の拡充のため新規項目の検討も実施しています。
主な測定項目
病原体遺伝子検査
- 新型コロナウイルス
- マイコプラズマ・ニューモニエ
- 百日咳菌
- MRSA
- Clostridioides difficile
- 結核菌群
- MAC(M. avium及びM. intracellulare)
生殖細胞系列遺伝子検査
- UGT1A1多型解析
ヒト体細胞遺伝子検査
- JAK2 V617F変異検査
CALR 変異検査(Type1、2)
MPL変異検査(W515K・W515L)
JAK2 exon12変異検査
日常検査の流れ
核酸(DNAやRNA)の精製
血液などの検体から専用の機器を使用してDNAやRNAを取り出します(精製)。後の検査結果に影響を及ぼすため、丁寧に実施することが重要です。
遺伝子の増幅
精製した核酸をPCR装置等を使用して増幅します。この操作を通して検体中に目的とする遺伝子があるかどうか判断することができます。
生理機能検査室
生理機能検査は患者さんの身体に直接触れて検査を行います。その為負担にならないよう十分に配慮して検査を行い、正確な検査結果の提供に努めています。また、患者さん自身の協力も必要であるため、安心して検査を受けて頂ける環境をつくり質の高い検査室を目指しています。
心電図検査
心臓は全身に血液を送り出すポンプ機能があり、全身の各臓器が必要とする栄養分や酸素を供給し、老廃物や二酸化炭素の運搬も担っています。心臓の筋肉(心筋)は体内で生じる電気の刺激で収縮しています。心電図検査は心筋が収縮するときに生じる電位変化を体表面から記録するもので、心臓が一定のリズムで拍動しているかがわかります。
主な項目・検査の流れ
標準12誘導心電図
ベッドに仰向けに休んでいただいた状態で両手首・足首と胸の6か所に電極を取り付け検査します。心電計で記録した波形から、不整脈、心肥大、虚血性心疾患、薬剤の影響、心臓に影響を及ぼす全身性疾患などの診断、及びこれらの疾患の経過予後および治療効果の判定を行います。
運動負荷検査
- マスター負荷心電図
階段を昇降する運動をしてもらい、その前後の心電図記録を行います。決められた回数を一定時間に昇降することで心臓に負荷を与え、心電図の変化の有無を確認しています。
他にも運動負荷検査には医師立ち合いのもと、検査中の心電図、血圧の変化等をモニタリングしながら検査するトレッドミル・エルゴメーター負荷心電図検査、CPX(心肺運動負荷試験)等もあります。
運動中及び運動前後の心電図や症状から心臓の病態評価、運動によって不整脈が誘発されるか、また不整脈が運動によってどう変化するのか等を判断します。
ホルター心電図検査
胸部に3~5枚の電極と携帯型心電計を装着し、約24時間記録を行います。この間患者さんには行動記録を記載してもらいます。
日常生活中の心電図を記録することで、一過性に出現する不整脈や狭心症などを検出し、記録した心電図と行動記録表を照らし合わせて診断に役立てています。
神経生理検査
脳波検査は脳の機能(働き)を調べててんかんや脳障害、睡眠障害などの評価するもので、考えや知能を調べるものではありません。脳細胞の小さな電気信号を取り出し、脳波計で波として記録します。
神経の検査は末梢神経の伝わり方を調べる検査で、手足がしびれる、力が入りにくいなどの症状がある場合にその原因や障害部位を調べます。
主な検査項目
脳波検査
頭部に20個ほど電極を装着した状態で基本的にはベッドに仰向けになり、落ち着いて目を閉じた状態で検査します。記録中は技師の指示に応じた開閉眼、光刺激(眼前で光を点滅させる)、過呼吸(大きく息を吸う・吐くを繰り返す)を行う場合があります。痛みはありませんので、安心して検査を受けてください。
神経検査
- 筋電図・誘発電位検査
手や足の末梢神経を皮膚上から電気刺激を行い、誘発される活動電位等を測定します。皮膚の上から電気の刺激を与えますので、少しの痛みや不快感がありますが、人体には影響ありませんので、安心して検査を受けてください。 - ENoG顔面神経
顔面の神経を刺激して誘発される筋電図波形の左右差を見る検査で、顔面神経の損傷の程度を評価できます。皮膚の上から電気の刺激を与えますので、痛みや不快感がありますが、人体には影響ありませんので、安心して検査を受けてください。 - ABR(聴性脳幹反応)
ヘッドホンを装着し、出る音を聞いて聴覚の神経や、大脳皮質の反応を見る検査で、聴力の評価や、脳幹機能の評価などができます。痛みなどは無く、小さな子供さんでも安心して検査を受けていただけます。
超音波検査
体の表面から超音波を当てることで、体内の臓器の形や状態などを知ることが出来ます。放射線を使用しない為、被爆もなく安全に病態の程度を把握することができる有用な検査です。
主な検査項目
心臓超音波検査
心臓は4つの部屋とその出入口にある4つの弁で構成されており、これらの部屋の大きさや動き、弁の状態・血行動態などを観察し、ポンプ機能が正常に働いているかを判断する検査です。治療方法の選択や治療効果の判定、手術時期の決定などにも役立ちます。
腹部・体表超音波検査
上腹部超音波検査
肝臓、胆道、膵臓、腎臓、脾臓、(腹部大動脈)など対象に、脂肪肝や腫瘍・腫瘤の有無、ポリープ・結石など臓器の異常や疾患の有無を観察します。体表超音波検査甲状腺、唾液腺などを対象に、皮膚・皮下組織の腫瘤や炎症性変化などを観察します。
血管超音波検査
全身の動静脈を検査対象とし、血管の状態や機能を評価する検査です。
- 動脈
動脈の狭窄や閉塞等の有無を調べ、血管壁の厚さにより動脈硬化の進行度などの評価をします。当院での主な検査は下肢動脈、頸動脈、腎動脈です。 - 静脈
血栓の有無や拡張、血液の流れ、逆流を調べ、静脈血栓症、下肢静脈流の診断に有用な検査です。当院での主な検査は下肢静脈です。
肺機能検査
肺機能検査とは、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)間質性肺炎といった呼吸器の病気が疑われる際やその状態を見るときに実施する検査です。マウスピースという筒をくわえて息を吸ったり吐いたりすることで呼吸の状態や酸素を取り込む力などを調べます。
実施している検査項目
- 肺活量
息を最後まで吐ききった状態から胸いっぱいに吸いきれる空気の量を測定します。性別、年齢、身長から求めた標準値に対して80%以上が正常です。80%を切るような状態を拘束性換気障害と呼びます。
- 努力性肺活量
胸いっぱいに吸いこんだ息をできるだけ勢いよく吐いて測定します。また、努力性肺活量の中で1秒間に吐くことが出来た量を1秒量と言い、70%以上が正常です。70%を切るような状態を閉塞性換気障害と呼びます。拘束性換気障害と閉塞性換気障害の両方の病態がある場合は混合性換気障害と呼ばれています。
DLCO(肺拡散能)
肺から酸素がどれだけ効率よく血液中に取り込まれているかを調べます。
FRC(機能的残気量)
息を最大に吐き出した状態で肺の中に残っている空気の量(残気量)を調べます。
CV(クロージングボリューム)
通常の検査では検出しにくい末梢気道の閉塞の程度を調べます。
呼気NO
呼気中の微量なNO(一酸化窒素)というガスを測定することで喘息の診断や程度の判定に役立ちます。アレルギーによっておこる炎症の度合い等の判断にも用いられます。
モストグラフ
モストグラフはマウスピースをくわえた状態で普段通りの楽な呼吸をします。空気の通りにくさや肺の膨らみにくさ等を調べる検査で、喘息やCOPD等の診断に役立ちます。普段通りの楽な呼吸で検査が出来る事から幅広い年代の患者さんが検査されています。
病理検査室
病理検査とは、患者さんから採取した臓器・細胞などを病理医が顕微鏡で観察し、癌などの様々な疾患の診断をし、治療方針に役立つ情報を医師に報告します。臨床検査技師は、病理医が正しく診断できるような病理組織標本、細胞診標本の作製を担当しています。
病理標本作製におけるインシデントを防ぐために、各工程を全てバーコード管理することで、検体取り違いの防止と検体照合チェックによる安全な運用を実現させています。その他に電子カルテ病理レポートの既読管理、内視鏡カセット検体、婦人科細胞診検体のリスク管理も行っています。
代表的な検査内容
- 組織診
- 免疫染色
- 術中迅速検査
- 細胞診
- 病理解剖
組織診
日常検査のながれ
主に1~6の各工程を経て病理組織標本が作製されます。
- ホルマリン固定
採取された組織材料は、速やかにホルマリン液に浸漬することで、自家融解や腐敗が防止され、良好な組織構造が保たれます。 - 切り出し
病理医が病変の位置、広がり、深達度、切除断端等を考慮して標本にする箇所を選んで切り出します。特に癌の場合は取扱い規約に準じた方法で行います。 - 包埋
顕微鏡で組織や細胞の構造を観察するために、組織を薄く切る必要があります。そのために適度な硬度が必要であるため、組織障害を起こさず、染色性も阻害せず、組織から除去できるパラフィン(ロウのようなもの)で組織を埋めます。 - 薄切
顕微鏡で観察するため光の透過を妨げない厚さ(通常3~5μm)に組織片をミクロトームを用いて切ります。 - 染色
病理組織診断は基本的にヘマトキシリン・エオジン染色を行います。その後、必要に応じて、特殊染色や免疫染色等が行われます。 - 診断
上記の工程で作製された組織標本を病理医が顕微鏡で観察し報告書を作成します。
免疫染色
通常は、ヘマトキシリン・エオジン染色で診断されますが、それだけでは確定診断できない場合に免疫組織化学染色(IHC)を用いて、腫瘍組織型、良悪性の診断、腫瘍増殖能判定等を行ったり、コンパニオン診断にも利用しています。
術中迅速診断
手術中に採取された生の組織を凍結しクリオスタットを用いて標本を作製し、直ちに病理診断を行って執刀医に約30分以内に報告します。
細胞診検査
一般的に患者さんの負担が少ない検査材料(婦人材料・腹水・胸水・尿・喀痰等)で異型(悪性)細胞がないかを確認する検査になります。当院では、液状化細胞診(liquid-based cytology:LBC法)を子宮頸部と口腔を対象に行っています。従来法に比較して、より精度が高い検査法になります。
病理解剖
病死者を対象に、死因または病因および病態の究明や臨床診断や治療効果の検討のために実施します。定期的にCPC(臨床病理検討会)を行っています。
病理検査室の環境保全
有害物質(ホルマリンや有機溶剤)を使用するため、局所排気装置を導入するとともに、有害物質の室外への流出を防ぐため部屋も陰圧にし24時間換気を行っています。またホルマリンやキシレンの分注装置を導入し作業者の暴露軽減にも努めています。