より良い高度な医療をご提供
2023年1月に呼吸器センターを開設いたしました。
様々な呼吸器疾患に対して内科、外科の枠を超えて診療を行うことで、より良い高度な呼吸器疾患に対する医療を提供できるようになりました。 呼吸器疾患は多彩な疾患の集まりである上に、他の診療科に負けず進歩の著しい分野です。例えば予後が悪いとされる肺癌は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の登場により薬物治療が生存率の向上と共にこの数年で劇的に変わり、ロボット支援下技術による手術や、呼吸動体追跡システムを用いた放射線冶療など新しい技術も増えています。超音波ガイドシステムを用いた気管支鏡手技が標準化され、検査診断効率も向上しました。また悪性疾患以外でも喘息に対する新規バイオ製剤が次々開発され、間質性肺炎では抗線維化薬が標準治療となりました。感染症領域ではこれまでの結核やインフルエンザだけでなく、COVID-19診療も我々は重要な役割を果たしてきました。一方、先進的医療だけでなく、超高齢者社会を迎え、肺炎や呼吸不全で重症化する患者さんも多く、終末期治療をどうするかというのも課題です。
我々にとって重要な役割は、一般的な疾患から専門的な治療を要する疾患まで正しく診断し、呼吸器領域への適切な治療を提供することだけでなく、影響のある領域への的確なコンサルテーションです。充実した33診療科を有し、密接な横のつながりで総合的な診療を行えることが他にはない当院の強みだと考えています。「呼吸器センター」としてこれまでの実績と今後の展望を広報していくのと同時にそれにふさわしい知識や技術の向上・スタッフの育成に努めていきたいと思います。
これからも一層、患者さんや地域の先生方に「お任せしてよかった」と思っていただけるよう、スタッフ一同取り組んで参ります。
特色
肺がんを中心に気管支ぜんそく、慢性気管支炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺炎、呼吸不全、肺炎、縦隔腫瘍、胸膜腫瘍、胸膜炎、自然気胸、睡眠時無呼吸症候群など、すべての呼吸器疾患に対応しています。
包括的な治療にあたって
ご高齢になりますと心疾患や糖尿病を患われている患者さんも多くおられます。そのような基礎疾患がある場合には総合病院である特徴を生かして、他の科と併診し適切な精査・治療の連携を行える体制を取っています。内科・外科・放射線治療などの包括的治療を必要とする患者さんに対しては、定期的に行われているカンファレンスで科を横断して情報を共有し治療を決定しています。
手術による治療
当院での外科手術では基本的には全例で胸腔鏡下手術を行います。リンパ節や他臓器への転移がない局所性の肺がんや気胸は手術で切除します。胸腔鏡下手術は、患者さんへの体への負担が少なく回復も望めるため積極的に実施しています。またロボット支援下での手術では3Dモニターで鮮明な画像を見ながら、多くの関節を有するロボットアームにより複雑で細やかな手術が可能になっています。
放射線による画像診断と治療
画像診断、IVR、放射線治療と3つの領域に分けられます。呼吸器の医師と連携し放射線の医師、診療放射線技師が中心となり行います。CT、MRI、PET検査などの画像で、がんの発見や他の臓器への転移を調べたり、治療中の効果を判定しています。IVRとは「画像下治療」といわれており、血管造影、CT、超音波などの画像を見ながら、大きく胸を開けることなく治療することです。カテーテルなどを使い、できる限り患者さんの負担を軽減しながら治療を行います。また放射線治療では動体追跡放射線治療を用い、腫瘍に集中して照射することが可能となっています。このように患者さんへの副作用のリスクを抑え生活の質を高めることにも努めています。
緩和ケアやリハビリテーションについて
進行期の肺がんや慢性呼吸不全の患者さんに対しては、痛みや呼吸苦などの症状を和らげる緩和ケアを行っています。医師、看護師が中心となり、患者さんの「つらさ」と「気がかり」をお尋ねし、こころの苦痛を和らげるお手伝いをしています。日常生活の質の低下に対しては理学療法士や作業療法士によるリハビリテーションの介入を行います。また、呼吸器疾患を患っている患者さんは嚥下障害があり、食事をうまく食べられない方も多くおられます。そのような場合には言語聴覚士と一緒に、舌を使って食べ物を喉の奥へ上手に送れるように訓練などを行っています。