TEL
#23 腎臓をいたわる過ごしかた | 加古川中央市民病院
ホーム > ウェブマガジン > 糖尿病教室 > #23 腎臓をいたわる過ごしかた

#23 腎臓をいたわる過ごしかた

糖尿病は、腎臓の機能を低下させる「糖尿病性腎症」を引き起こす原因となります。糖尿病性腎症は、慢性腎臓病(CKD)の一種です。糖尿病のある人も、ない人も知っておくと良い!腎臓についてのお話です。

なぜ腎臓を大事にしないといけないの?

腎臓は沈黙の臓器と言われており、症状がないまま悪化します。そらまめのような形をした握りこぶしくらいの大きさの臓器で、腰のあたりに左右対称に2個あります。腎臓にはさまざまな働きがあり、体を正常な状態に保つ働きをもつ大切な臓器です。腎臓が悪くなっていると気づいたときにはすでに高度低下~末期腎不全ということもあるので、できるだけ早く自身の腎臓の状態を知ることが重要です。

腎臓のはたらき

  • 老廃物を排出する
    身体に不要なものだけをふるいにかけて排出する
  • 余分な塩分・水分を排出する
    体内の塩分(ナトリウム)・水分が一定の量になるよう調節する
  • ミネラルのバランスを整える
    身体に不要なものだけをふるいにかけて排出する
  • 血圧を調節するホルモンを出す
    レニンというホルモンの分泌が減ると血圧が上昇する
  • 赤血球を産生するホルモンを出す
    エリスロポエチンというホルモンを分泌し、赤血球の産生を促す
  • ビタミンDを活性化する
    健康な骨の維持に働く

腎臓が悪化する原因

腎臓が悪化する原因はさまざまで、糖尿病、高血圧、腎炎、心不全、喫煙、肥満、免疫の異常、その他疾患の影響などがあげられます。血糖が高い方は、血糖値が安定しないと10年程度で末期腎不全に至ると言われています。

血糖値は問題なくても、高血圧などほかの原因がある場合、長い期間をかけて徐々に腎機能が低下します。

どちらにせよ、長い期間をかけて弱った腎臓の機能が回復することはほとんどなく、いかに腎臓が悪くなるのを抑えるかが重要です。


腎臓の機能が低下!?慢性腎臓病(CKD)について

慢性腎臓病(CKD)は慢性に経過するすべての腎臓病を指します。心筋梗塞などの心血管病合併の頻度が高く、また無症状のうちに腎機能が低下し、透析や腎移植を必要とすることもあります。

腎臓病の治療を受けている人は非常に少なく、日本人高齢者の4人に1人は慢性腎臓病(CKD)であり、75歳以上では3人に1人。約2000万人の患者さんがいるとされています。中でも治療を受けている患者数は62万9000人と少なく、多くの人が自分の腎臓の状態に気付かないまま過ごしている可能性があります。

参考:Arisa Kobayashi, Keita Hirano, Tadahisa Okuda, Tatsuyoshi Ikenoue, Takashi Yokoo, Shingo Fukuma(2024)

慢性腎臓病(CKD)の診断

下記の①、②のいずれか、または両方が3カ月間以上持続する場合には腎障害と判断されます。

①尿検査、画像診断、血液検査、病理などで腎障害の存在が明らかであり、特に0.15g/gCr以上のタンパク尿(30mg/gCr以上のアルブミン尿)がある
②糸球体濾過量(GFR)<60ml/分/1.73m2

【自分の腎機能をチェック!】


腎臓をいたわるためにできること

お家で測って欲しいこと

【血圧を測定する】

血圧を良い値に保つことが、腎臓をいたわるために一番重要です。血圧測定を行うタイミングは、朝起きてトイレをすませ、座って1~2分経過後(薬を飲む前)。夕食・入浴を済ませお薬を飲んだ後の1日2回が良いとされています。

目標:130/80以下(75歳以上の場合150/90以下)

【体重を測定する】
身体に余分な水分がたまっていないかを確認します。1週間で2kg以上の体重増加は要注意です。

また、食事管理を頑張りすぎるあまり、必要な栄養やエネルギーがとれず筋肉が落ちてしまいサルコペニア・フレイルといった状態になっていないかを確認します。
サルコペニア:加齢による筋肉量の減少と筋力の低下
フレイル:加齢により心身が疲れやすく弱った状態

取り組んでほしいこと

【食事】
腎臓の老廃物を出す力が弱まる分、身体に入る量を加減することが重要です。

腎臓の状態や年齢、体格、体力、普段の食事摂取状況などにより、制限の程度が異なる場合があります。

血糖が高いと言われたことがある方は、血圧とともに血糖値もよい値に保つことが重要です。

目標:HbA1c 7.0%以下

【お薬】

腎臓の機能が低下してくると、それを補うためにいろいろな種類の薬が処方されます。

例えば飲み忘れが積み重なった、忙しくて昼の内服ばかりが残っているなど、もし薬が手元にたくさん残っていたら、医師または薬剤師に相談してください。

【運動】
適度な運動は腎機能を保つだけではなく、筋力を維持し「元気に過ごす」ことにつながります。腎臓病患者さんのほとんどは高血圧、またはその治療中であるため、血圧が過度に上昇しないよう注意しながら、体力に合わせた運動を行いましょう。

取り組んでほしいこと

【喫煙】
喫煙は腎臓だけではなく、肺がん・食道がん・咽頭がんなど他の疾患のリスクも高まります。喫煙により腎臓への血流量が低下すると、腎機能が低下しやすくなるので禁煙は必須です。

【脱水】
脱水は腎臓へのダメージが非常に大きくなります。水分摂取量が1日1L以下だと腎機能低下のリスクが高まることがわかっています。別の疾患などで医師から水分制限を指示されたことがない場合は、1日1~1.5Lを目標に水またはカフェインの少ない飲み物(麦茶など)を摂りましょう。

腎臓病チーム
当院のCKDチームは、「腎臓をいたわり、元気に過ごす」ことを支援します。腎臓をいたわりすぎて体力が落ちては元も子もないと考えています。腎臓が気になってきた方は、ぜひかかりつけの先生に相談してください。

記事一覧