#21 災害への備え~日頃からの心得~
ライフライン(水道、ガス、電気)の遮断、交通機関・流通の遮断、通信(電話、インターネット、テレビ)の遮断、家屋の倒壊。災害はいつ起こるか分かりません。糖尿病の方は、災害時には食事の変化、活動量が変わる、ストレス、薬が手に入らない、などで血糖値のコントロールが難しい状況になります。災害に備えて日頃からできること、実際に災害が起きた時にできることを紹介します。
避難生活において困難となる要因
食事
- 食料が確保されていない
- 炭水化物が多い(おにぎり・パン・カップ麺など糖質に偏る)
- 食べ物を「残せない」という思いがある
- 水分不足による脱水
これらは血糖値の上昇のリスクに!
<食事のポイント>
- その時に食べられるものを食べる
- 食事の供給が十分になると、全部摂取するとカロリー過多となる場合もある
→周囲に気兼ねして残さず食べるのではなく必要量を食べる - 食品のカロリー表示に注意しできるだけ日常生活の摂取量に近づける
- 水の配給があれば、こまめに水分補給を行う
(トイレ環境の問題から、水分を控える傾向にある)
水不足
- シャワーや入浴が出来る施設がないと清潔の保持が出来ない
- 口腔内・陰部・お尻・足のトラブル
これらは感染症のリスクに!
<感染予防のポイント>
- 手指衛生(擦り込み式手指消毒剤利用)
- ウェットティッシュ、おしりふきを有効に利用し体を拭く
- トイレを我慢しない
- 症状がある場合は救急対応を依頼する
- 適宜、室内の換気を心掛ける
- 足の毎日の観察を行う
- 外傷に注意(靴下の着用)
- 足のトラブルを発見したら速やかに医療者へ報告する
運動
- 避難所でじっとしていなくてはいけない
- 瓦礫の除去や捜索など活動量が増える
→糖尿病の人は一見元気にみえるため、避難所で任される業務が多くなりやすい
深部静脈血栓症の発症(エコノミークラス症候群)、低血糖をはじめとする血糖値の変動リスク・足のケガに!
<運動のポイント>
- 定期的に体を動かす(散歩やラジオ体操)
- 座ったままでも足のつま先や足首を動かす
- ゆったりとした服装で過ごす
- こまめに水分補給をする
内服・血糖測定・注射
- 薬剤がない
→内服薬がない場合は、食事で調整を!
ただし、1型糖尿病でインスリンがない人は早急に救護斑へ状況を伝える
インスリンが必要な患者は、今何日分の薬剤を持っているかを伝える
<内服・血糖測定・注射のポイント>
- 内服・インスリン注射・血糖測定器・ブドウ糖は一つにまとめる
- 針の数が少ない場合は複数回使用して良い。(必ず空うちをする)
消毒綿はなくても良い。可能な限り清潔に保つ - 低血糖より血糖はやや高めであっても許容する
注意事項
注射器や針の複数患者への使いまわしは絶対にやめてください
災害への備え
生命を守るため、災害に備えることが大切です
- 多くの被災者が押し寄せ満員になることがあります。2・3か所の避難所をあらかじめ確認しておきましょう
- 家族と事前に災害時の避難について話し合いを行っておきましょう。
- 被災後3日間は自力で生き延びる必要です。非常持ち出し袋に防災用品・非常食と糖尿病治療薬を準備しておきましょう。
- 災害時、薬は中々手に入りません。普段から、歩いて帰ることが出来ないところに出かける場合は「内服薬は最低3日分」、「インスリン製剤(各1本)」、「補食」を必ず持ち歩くようにしましょう。
糖尿病患者さん自身が心がけておくこと
- 治療情報をまとめる(製品名、用法、用量)
- 内服薬の名前を覚える
- インスリン製剤の名前を覚える(色を覚えるだけでも良い)
- 日頃の血糖値を把握する
- 日頃の内服薬や注射を写真やメモに残す
非常持ち出し袋に入れるもの
- 内服薬1週間分
- インスリン 各1本・注射針・消毒綿
- 血糖測定器
- お薬手帳(写し)
- 糖尿病連携手帳(写し)
- 自己管理ノート(写し)
- 保険証(写し)
- ブドウ糖
ストレス管理
- 予期せぬ生死の危機に直面することで引き起こされるストレス
- 親しい人を喪失するストレス
- 居住・職場・学業の環境の変化に伴うストレス
ストレスによる血糖値の悪化の恐れがあり、心理的興奮状態などによる高低血糖に気づきにくくなります。一人で悩まず相談してください。
防災メモを活用しましょう!
災害時に必要なとなる情報をまとめた「防災メモ」を事前に作りましょう。かかりつけ医や薬のリストなどを事前に書き出し、いざという時のために準備をしておくと安心です。
参考文献:日本糖尿病教育・看護学会特別委員会「災害時の糖尿病看護マニュアル」改訂ワーキンググループ,2020
参考文献:日本糖尿病学会,糖尿病医療者のための災害時糖尿病診療マニュアル,文光堂,2014
- 糖尿病看護認定看護師
春山 裕美
- 今年の夏も非常に暑い日々が続いていますね。暑さにうんざりしつつも、夜に聴こえる虫の音などから秋の気配も感じはじめました。ゲリラ豪雨をはじめ、地震など日々災害のニュースも多いですが、何気ない日々を過ごせることに感謝の気持ちを持ちながら過ごしていきたいですね
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