肝臓は腹部の右上にあり、体内最大の臓器です。肝臓は体の右側部分(右葉)と左側部分(左葉)に分けられ、下方には、胃や腸から吸収した栄養を肝臓に運ぶ静脈(門脈)が通っています。肝臓の主な役割は、門脈から流入した血液に含まれる栄養を取り込んで、体に必要な成分に変えることや、体内や、体外から摂取された物質を解毒して排出することです。また、脂肪の消化を助ける胆汁をつくるはたらきもあります。
肝臓がんは、肝臓にできるがんの総称で、このうち肝臓の主な細胞が、がん化したものを「肝細胞がん」と呼びます。同じ肝臓にできたがんでも、肝臓の中を通る胆管が、がん化したものは「肝内胆管がん」と呼びます。肝細胞がんと肝内胆管がんは治療法が異なることから区別されています。
肝細胞がんの発生には、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスの感染、アルコール性肝障害、脂肪性肝疾患(SLD)などによる、肝臓の慢性的な炎症や肝硬変が影響しているとされています。
早期の段階では自覚症状がほとんどなく、肝臓がんが進行した場合は、腹部のしこり・圧迫感、痛みなどがでる場合があります。健康診断やほかの病気の検査のときに、たまたま見つかる事があります。
肝がんが疑われる場合は、画像検査(超音波検査・CT検査・MRI検査)や血液検査を組み合わせて検査を行います。腫瘍が発見された場合は良性か悪性か、また肝細胞がんとその他のがんかを鑑別する為に、針生検などの検査を行うこともあります。
肝臓の病変(病気が疑われる部位)に細い針を刺して組織を採り、顕微鏡でがんであるか、悪性度はどうか、などを詳しく調べる検査です。
肝がんの患者さんは、がんと慢性肝疾患2つの病気を抱えているため、がんのステージだけでなく、「肝癌診療ガイドライン」に基づいて治療方針を決定します。ただし、全ての患者さんが同じように治療できるわけではなく、患者さんの希望や生活環境、年齢を含めた体の状態などを総合的に検討し、医師と話し合って決めていきます。
*1:肝切除の場合は肝障害度による評価を推奨、*2:腫瘍数1個なら①切除、②焼灼、*3Child-Pugh分類Aのみ、*4患者年齢は65歳以下
おなかの上から画像機器(超音波・CT)でがんの位置を観察しながら、肝臓内のがんに向けて治療用の針を刺し局所的に治療する方法です。手術に比べて簡便で、体への負担が少ないことが特徴です。
血管造影の技術を応用した治療で、X線で体の中を透かして見ながら、鼠径部(足の付け根)や肘、手首の動脈から肝動脈にカテーテルを挿入し、標的となるがんの治療を行います。Child-Pugh分類(表1)がAまたはBで、大きさが3cmを超えた1~3個のがん、もしくは、大きさに関わらず4個以上のがんがあり、手術が難しくかつ穿刺局所療法の対象とならない場合に行われます。がんが広範囲にある場合は、複数回に分けて行うこともあります
肝動脈化学塞栓療法(TACE)
鼠径部あるいは肘や手首の動脈からカテーテルを入れ、血管造影を行いながら、先端を肝動脈まで挿入し、がんに栄養を送っている肝動脈を詰まらせることで、がんへの血流を減らし細胞の増殖を抑えます。
肝切除術
がんのできた部位を手術で取り除きます。腫瘍を確実に切除できる治療法です。肝切除ができるかどうかは、肝臓の障害度やがんの大きさによって判断します。
肝臓の基本構造
肝切除の術式は、がんがある場所や肝機能に応じて、さまざまな方法があり、小さい範囲でがんの部分だけを切除する場合は部分切除、がんのある区域を切除する場合は亜区域切除や区域切除、右葉や左葉を広範囲に切除する場合は葉切除や拡大葉切除という術式が選択されます。がんがある場所やがんの数によっては、お腹に小さな穴をいくつか空けて、そこから手術器具などを挿入して行う腹腔鏡下手術が可能な場合があります。
腹腔鏡下手術について
腹腔鏡下手術は、皮膚を数カ所切り開いて穴を作り、腹腔鏡(内視鏡カメラの一種)と手術器具を腹腔内に挿入して行います。大きく切り開かないため、身体への負担の少ない低侵襲手術です。
肝移植
患者の肝臓をすべて取り出して、ドナー(臓器提供者)の肝臓を移植する治療法です。日本では、近親者などの健康な人から肝臓の一部を提供してもらう「生体肝移植」が一般的ですが、近年では、脳死後のドナーから肝臓を提供してもらう「脳死肝移植」も行われています。
臓器提供者から患者へ臓器を移植
手術や穿刺局所療法が難しい場合や骨や脈管内に広がったがんに対する治療として、放射線治療が行われることがあります。骨に転移したときの痛みの緩和を目的とした治療や、脳への転移に対する治療として勧められています。
薬剤それぞれに特有の副作用があります。医師や薬剤師に、どのような副作用が出る可能性があるのか、患者さんと相談しながら進めていきます。
肝切除や肝移植、穿刺局所療法、肝動脈化学塞栓療法(TACE)などが行えない進行性の肝細胞がんで、体の状態を表す指標の1つであるパフォーマンスステータスが良好かつ、肝予備能が保たれている(Child-Pugh分類A)場合には、全身薬物療法を行います。
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