放射線治療には、手術と同様にがんのある部分に照射し完治を目指す「根治照射」、症状を和らげるための「緩和照射」、がんの再発を防ぐ「予防照射」の大きくわけて3つの役割があります。根治照射は患者さんのからだの中にある腫瘍に強い放射線を照射して病気の細胞を死滅させます。骨などに転移したがんは強い痛みを伴うことがありますが、緩和照射を行うことで症状を和らげることが期待できます。また、術後に放射線をがんに照射し、がん細胞の増殖を止めて再発を予防することもあります。すべてのがんに対して放射線治療が有効というわけではありません。患者さんのがんの広がりや体の状態、これまでの検査、治療内容などから、患者さんのQOL(生活の質)を考慮し、相談しながら治療内容を選択します。
放射線専門の担当医師が診察し、検査結果などを参考にして治療方針(身体のどの部位に、どの装置を使って、どのくらいの放射線を照射するのか)を決定します。
治療計画用のCT画像を基に実際に放射線を照射する前に、コンピュータで計算し、最適な範囲や方向を決めます。患者さん個別に最適な計画を立てます
治療計画の通りに実施します。がんの種類や部位ごとに放射線の種類、照射方法があります。病変と正常組織の位置関係により、治療回数は決定します。
治療後は、経過を確認するための定期的な診察が必要となります。効果判定や再発のチェック、合併症などの確認をおこないます
治療内容や部位によって副作用の症状もそれぞれです。からだ全身については疲労感やだるさ、食欲不振などのほか、広範囲に放射線を照射する場合には貧血や、感染、出血を起こしやすくなるなどがあります。局所的には脱毛や皮膚の発赤、色素沈着など、外見の変化を伴うものや、下痢や尿の排泄障害などの生活行動に影響を及ぼすものなどがあります。
多くの場合、放射線治療中の日常生活は普段通りで構いませんが、疲れを感じはじめたら、十分な休息や睡眠をとるなど無理をしないようにしましょう。
放射線治療の副作用が起こる時期は、放射線治療中または終了直後のもの(急性期)と、終了してから数か月から数年たった後のもの(晩期)があります。急性期の副作用は放射線治療後しばらくすれば回復していくものが多く、晩期の副作用は起こる可能性が低くても元に戻らないものも含まれます。極めてまれですが、二次がんと呼ばれる、放射線治療の影響で発生するがんもあります。
これらの副作用を減らすため、放射線量、照射範囲などを考慮し、細心の注意を払って治療計画を立て、患者さんの状態に合わせて治療を実施いたします。また照射後も定期的に経過観察をおこないます。
放射線治療の効果を見る時期(タイミング)や方法は、治療の目的や病状によりさまざまですが、放射線治療の効果が出てくるまでにはある程度の時間がかかります。
治療の効果判定や副作用の確認、転移や新規病変の有無のチェックなど、放射線治療が終了した後も、定期的な診察、検査が重要となります。
洗うことは可能ですが、ぬるめの湯で地肌を洗い流す程度、低刺激のシャンプーをよく泡立てて、指の腹で優しく洗ってください。髪を乾かすときは、強くこすらず、タオルで地肌を押さえるように水分を拭き取り、ドライヤーは直接地肌に当てず、温風は高温を避けましょう。
頸部や胸部への照射中、照射後に、声がかすれたり、出にくくなることがあります。線量にもよりますが、回復するのに数か月以上かかることもあれば、元の状態まで戻らないこともあり得ます。ただ、「たまに」声が出にくくなるということであれば、風邪や喉の使い過ぎによる炎症など、他の原因の可能性が高いと考えられます。
口の中や喉、食道、胃などに放射線治療の影響で炎症が起こっている間は、辛いものや香辛料をたくさん使ったもの、極端に熱いものなどの刺激の強い食べ物・飲み物は避けてください。炎症が改善すれば、普段通り食べていただくことができます。
放射線治療中や治療後に、放射線による腸炎を生じることがあります。照射中から照射直後に生じる腸炎は、通常2~4週間程度で改善しますが、数か月~数年たってから生じる放射線腸炎はなかなか改善しない可能性もあります。
放射線治療直後でも、周囲への影響はありません。ご家族や周囲の方と距離をとる必要もありません。
放射線を腹部や骨盤部に照射した場合、妊娠・出産に影響が出る可能性があります。照射部位によっては、できるだけ影響が出ないように照射方法を工夫することが可能な場合もありますが、影響が避けられない場合もあります。腹部や骨盤部への放射線治療後に妊娠、出産を希望される方は、治療前に主治医および放射線治療医とよくご相談ください。妊娠中の放射線治療は、原則として行いません。
放射線治療
日本医学放射線学会放射線治療専門医・指導医
厚生労働省認定臨床研修指導医
医学博士